「指輪を側溝に落としてしまったんです・・・」
朝の7時。ある女性から電話が入りました。「わかりました。すぐ向かいましょう」。待ち合わせの場所に準備を整えてすぐに急行しました。
「側溝に携帯電話を落としてしまって」「側溝に鍵を落として」・・・このような依頼は何度か受けて、比較的簡単に解決しています。バールを使わないと、重いコンクリートの蓋は上げることはできません。蓋を開けてしまえば、そう難しい作業ではありません。
車中お話を聞くと、どうも今回の状況はかなり違っていました。
落としたのは前日の夕方6時。場所は福岡市の中心街。博多の夏の祭り「山笠」のど真ん中でした。ちょうど近くで番をしていた山笠の若衆たち数人が、側溝の蓋を上げて、懐中電灯を使って、探してくれたそうです。それも4時間も・・・。しかし、見つかりませんでした。彼女は諦めきれずに、ウチに電話をしてきたというわけです。
う〜ん。それだけ探して見つからない。 ちょっと不安がよぎりました。
写真を拡大してご覧ください。若衆の右の足元。 細い側溝があるのがわかりますか? そうです。その側溝の中だったのです。雨水を処理するための側溝ですが、細くて手が入りません。
バールで数箇所の蓋を開けて、中を覗きながら、様々な工具を使って「指輪探し」を始めました。
汚泥が3センチほど底にたまっています。昨夜かき回したせいでしょう。指輪は汚泥の中に埋まってしまっているようです。何度も汚泥の中をかき回しても見つかりません。アルミフォイルの切れ端、携帯のストラップ、一円玉が見つかりましたが、肝心のシルバーの指輪は出てきません。・・・時間がどんどん経過していきます。
「何を落としたんですか?」「大変ですねぇ」・・・朝の通勤の人たちが、声をかけてきます。
1時間30分ほど経過して・・・、やっぱりダメかな〜。とさすがの便利屋さんも、少し弱気なりました。
近くで様子を見ていた依頼者も、「もうあきらめます・・・」
「もう、ちょっと頑張ってみましょう。」と私。
全面どぶさらいすることにしました。汚泥を一箇所に集めて、その汚泥を地表に少しずつ上げていきました。そうししているうちに、積み上げた汚泥の中腹にキラリと光るものが目に入りました。
「これですか?」
「あっ、そうです!!」
側溝の蓋を上げて格闘すること2時間。9時半になっていました。
やれやれ、よかった。よかった。